他の人よりも有利な立場にいたい、他の人よりも優れていると感じたい……
人間には「欲」がありますから、少しでも自分が良くありたいと思うのは当たり前のことです。
ただそれを、とても醜く表現してしまう人も少なからず存在してします。
そんなことを、MtFという立場で私も経験してきました。
今回は、胸くそ悪いだけのMtFヒエラルキーについてお話していきます。
目次
経験したMtFヒエラルキー
幾度となく、今までとは全くの別人のようになってしまったMtF仲間から、所謂『毒』を食らわされたことがあります。
多くの場合が、自分と同じ境遇だった人に、何らかの進展があったときに、態度が急変してしまうパターンです。望んでいたことを叶えて有頂天になってしまい、一時的な優越感から心ない言動を取ってしまうのかもしれませんが、でもそれがその人の本性かも知れず。
私は自分が女性であることを強く確信していたので、診察とか診断そんなことは全く頭になく、個人輸入で女性ホルモンを手に入れて身体を変化させ、しかるべきタイミングで手術を受けようと思って20代を過ごしていました。医師から性同一性障害の診断を受けていないとSRSを受けられないなんて当時は知らなかったので。
そんな時代に受けた残念な出来事を、いくつか紹介します。
あなたとは住む世界が違うの
今から20年ほど前。
女声のレクチャーを始めだしたときに出会った、年上のMtFのAさん。
もう顔も名前も忘れてしまいましたが、でもとっても人当たりが柔らかく、素敵なお姉さんという感じで、仲良くなっていきました。
そしてAさん、タイでのSRSが決まりました。国内のアテンド会社の設立時期などを考えると、おそらくアクアビューティに依頼をされたのだと思います。
「今度タイに行って手術を受けてくるから、買い物に付き合って」
と声を掛けられ、もちろん二つ返事でOKをして、大きなショッピングモールに買い物へ行きました。
二人であれこれと話しながら、スーツケースなどを買ったのを良くおぼえています。
素敵なお姉さんが、私も憧れているタイでのSRSを受けるのですから、そりゃ私だってテンション上がりますよね(笑)
出発の数日前にも会って、期待と不安に顔が引きつっていたAさんを励ましたりとかしました。
それから1ヶ月くらいして帰国したよ、とメールで連絡があり、お見舞いに行きたいと返したらダイレーションが大変だから、少し落ち着いてからねって返事がありました。気持ちをグッとこらえてAさんが元気になるのを待ちつつ、週1くらいでメールのやり取りをしていたのですが、あるときこんな感じのメールが来たのです。
「私はもう女性になったから、MtFのあなたとは住む世界が違うの。先に幸せになってゴメンね」
最初は、意味が全く分かりませんでした。
あんなに素敵で憧れのような存在だったAさんから、突然見下しのメール。
こんな裏切られ方ってあるんだな……と、当時はとても落ち込みました。
そこでAさんとは縁が完全になくなり、今どこで何をしているのか、全く知りません。
診断書持ってないの?
性同一性障害という言葉を知り、性別適合手術を受けるためにはジェンダークリニックに通って診断書をもらわなければならないという知識を得るきっかけとなった事件です。
ホステスをしたりライターをしたりと仕事を猛烈にしていた時代、新宿歌舞伎町の区役所通りにあった喫茶店でBさんと出会いました。
Bさんは見るからにMtFという感じの雰囲気や話し方をしていて、ニューハーフバーで活躍をしていました。Bさんが私に声を掛けてきて、世間は辛いけれど強く生きていこうね!とかそんな話をしたような記憶があります。当時私も歌舞伎町で働いていたのですが、出勤前に寄っていたその喫茶店でBさんとは週2回くらい会うようになっていました。
そこで、SRSには診断書がないとダメとBさんから教えられたのです。
Bさんは、ジェンダークリニックに通い出したとのことで、手術のためにニューハーフバーで働いてお金を貯めているのだけれど、そろそろ目処が立ってきたから診断書が出たらバーを辞めるみたいなことも言っていました。
そしてあるとき、Bさんが診断書を見せてこう言ったのです。
「まだ診断書持ってないの?それじゃ手術受けられないよ。まぁ別に私の人生じゃないから、あなたがどうなろうと知ったことじゃないけれど」
このとき、Aさんのことを思い出しました。
『あ……Bさんも、変わっちゃった』
って。
「どこのクリニックに行ったか知りたいでしょ?」
今までは知り合い以上友達未満くらいの対等な関係での会話をしていたのが、突然マウントを取ってきたんです。
私もそこで変な意地を張らなきゃいいのに、何だか相当頭にきちゃったんでしょうねクリニックの情報を一切聞きませんでした(笑)
MtFヒエラルキーが時々起る理由は?
女性として生きていきたいのに、日本では古くから、男性が女性のような雰囲気でいることが正しくないという「らしさ」を強制する風習がありました。そして今でも、それは残っています。
ボーイッシュがあるFtMとは違い、ガーリッシュが許されないMtFにとって、女性という目標に一歩でも近づけることに喜びと達成感を強く得てしまうのかもしれません。
そうなると、今度は自分よりもまだ先に進めていないMtFを見下して、如何に自分が優れているのかを誇示したくなってしまうのでしょうか。
多くの当事者と関わる仕事をいくつもしていますが、その中には自分よりも先に進んでいる人をまるで神様かのように崇め、そして自分よりも進んでいない人を蔑む人がいます。
そのようにしないと自分を肯定できないほどに、これまで辛い人生を歩んできてしまったのでしょう。その過程で、心が歪んでしまうのかもしれません。
自己肯定を自分の中である程度行えないと、どうしても周りと比較することでしか自分を保っていられなくなってしまいます。
特に、目的や目標が同じでハッキリしている相手に対しては、羨望と嫉妬、尊びと蔑み、上級と下級のように、自分にとって上か下かで相手の立場を判断して、優越感に浸ることが容易です。
最後に、私が最も落胆した経験を。
呆れを通り越して気絶しそうになる
Cさんは、出会ったときから私に対抗意識を持っていました。
当時の私はジェンクリにまだ通っていない、個人輸入ホルモンをしていた時代なので、ある意味で「女声」だけは自信を持っている状態でした。今だから言えますが、テレクラでサクラの仕事もしていたので(汗)
Cさんは、ホルモンは注射を受けていました。ただ診断はもらってなかったと思います。
声は私に敵わないと思ったのでしょうか、病院できちんと注射で女性ホルモンを受けていることを自慢していました。そしてそれが1アンプル(1本)4000円とかするらしく、それを毎週受けることができる経済力も、鼻に掛けていました。
個人輸入ホルモンも、何だかんだと月15000円くらいでしたから、病院での注射と月額では大差ないんじゃないかなと思っていたのですが、別にCさんと喧嘩をしたいわけではなかったので、そんなことは黙っていました。
言い方を変えると、Cさんが私を見下すことで浸れるはずの優越感に対して、無視をしていたわけです。
『そんなことを張り合って、どんな意味があるんだろう?』
としか思っていなかったので。
Cさんは、そんな私の反応も気に食わなかったんでしょうね。マウント取りが日増しにエスカレートしていきます。
どこそこでこんな服を買ったとか、高級ブランドのファンデーションを使っているとか、渋谷はナンパされまくるから行かないようにしているとか。
ことある度に女性という立場に近づいて行っていることを自慢してきて、私のことを鼻で笑うのです。私はCさんを友達ともなんとも思っていないのに、Cさんは私に付きまとっているような状態でした。電話を掛けてきては、自慢話ばかりだったし。
……思い出したら、ちょっとムカついてきました(笑)
10数年ぶりに、ひょんな事から再会しました。
Cさん、SRSをとっくに受けていて、年下の可愛い彼氏がいるとのこと。
そして私も、SRSを受けていて、戸籍の性別も女性になり、男性と結婚をしていました。
けれどもこちらの近況報告など聞く気などさらさらないようで、自分の事を一方的に色々と話し終えてから、こんなことを言いました。
「結婚指輪なんか見せつけちゃってさ。それにボイストレーナーでテレビにも出ちゃってさ。けれどもね、私の方が先に手術受けたんだから、そのことは覚えておきなさいよ」
う、うん……
色々とぶっ飛びすぎていて、意識を失いそうになりました。
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