ホルモン療法

ホルモンは注射・ジェル・パッチ・錠剤どれが良い?

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ホルモン療法

トランスジェンダーにとって、最初の決断となるのがホルモン療法だと思います。
身体の状態を根本的に変えてしまう行為で、一度始めたら特段の理由がない限り一生続ける必要があります。
そんなホルモン療法には、様々な方法があります。
今回は、注射、ジェル、パッチ、錠剤について、それぞれの利点と欠点についてまとめていきます。

そもそもホルモン療法とは?

MtFならば女性ホルモン薬(卵胞ホルモンや黄体ホルモン)、FtMならば男性ホルモン薬(テストステロン)を身体に取り入れる治療のことです。
身体の性別とは逆のホルモン剤を取り入れることで、身体の内部の性別をある程度変えてしまうことが可能です。また体内でのホルモン分泌が大幅に減り、場合によっては分泌がほぼ行われなくなることから、そのレベルに達した場合は一生涯にわたってホルモンを外部から取り入れる必要があります。
性ホルモン濃度が大幅に減少した状態が続くと、いわゆる更年期症状が出てくることがあり、様々な悪影響を心身ともに与えてしまいます。特に鬱状態や骨粗しょう症などが心配されます。そのため、一生涯の治療が必要となるのです。
なので、安易な気持ちでホルモン剤に手を出してはいけません。

ホルモン療法の方法は主に4種類

タイトルにもあるとおり、

・注射
・ジェル
・パッチ
・錠剤の服用

の4種類が主な方法です。
それぞれに利点と欠点があります。
それを選択するのかは、医師ときちんと話し合った上で決定しましょう。

注射

注射と聞くだけで身震いしてしまう方もいらっしゃるかと思います。
新型コロナウイルスのワクチンで、多くの人が筋肉注射による接種を受けています。
その他には、インフルエンザワクチンの皮下注射を学校などで受けた世代も多いかと思います。
健康診断などでは、採血をするために静脈に注射針を刺して血を抜かれることもよくあります。

ホルモン療法で行われる注射は、筋肉注射です。
筋肉に入れることで、じわじわと成分が血管に入っていき、1週間~4週間くらい有効濃度を保つことができます。

利点
血中に直接入っていくので成分がきちんと身体を巡ってくれることから、効果が最も出やすい。
・女性ホルモンの場合は1~2週間、男性ホルモンの場合は2~4週間のスパンで接種すれば良いので、面倒くささが最も軽い。
肝臓への負担や血栓症のリスクが比較的低い。

欠点
自分で注射することができないので、その度に病院へ通わなければならない。
・筋肉注射なので、多かれ少なかれ痛みがある。
・同じ場所に何度も注射をした場合、その部分が小さなコブのように固くなることがある。
・女性ホルモンは注射があまり一般的ではないため、受け入れてくれる病院探しが大変なことがある。
診察時間外では当然のことながら受けられない。

ジェル

塗り薬です。
基本的に毎日、決まった量を決まった時間に塗ることで、皮膚から成分が体内に入っていきます。
ゆっくりと浸透していくので、注射のような即効性はなく、穏やかにじわじわと効いていきます。
塗り薬は虫刺されや軽度の火傷、肩こりなどで使用経験がある方も多いでしょうから、比較的抵抗感が少なく行えるかと思います。

塗る場所もとても大切で、体内に浸透しやすい場所に使うことが効果的です。
最も浸透しやすい場所が、陰嚢と言われています。ついで額や頬、頭皮などの顔の部分、そして脇の下や背中。腕の内側やお腹などは浸透力がそれほど高くなく、陰嚢の10分の1くらいだそうです。
使用場所や頻度、量については、医師と相談をして決めましょう。

利点
とにかく気軽で楽。
・じわじわと効いていくので、突発的な強い副反応に悩まされるリスクが低いかも?

欠点
毎日同じ量を同じ場所に塗る面倒くささがある。
・効果が現れるのが穏やかなので、効いているのか不安になるかもしれない。
・汗をかいたりシャワーを浴びたりすると、流れてしまう。
・自分が使ったタオルやティッシュなどを介して、他の人に付けてしまう可能性がある。

パッチ

あまり聞き慣れないかもしれませんが、腰痛や肩こりなどで使う方も多いかと思うシップのような貼り薬です。
貼り薬は成分が一定量常に肌から浸透していきますので、安定的な効果を長時間維持することが可能です。
ジェルと似たような感じですが、利点や欠点に微妙な差があります。

利点
毎日貼り替える必要がない。1週間に2回貼り替えるタイプと、2日に1回貼り替えるタイプがある。
・常に一定量が皮膚から浸透していくので、ホルモン値の乱高下が少ない。

欠点
貼った場所が赤くなる(軽くただれる)可能性がある。
・汗をかいたり、動きが激しい場所に貼ったりすると、剥がれてしまうかもしれない。
・その部分が露出する場所や状態では、明らかに何かを貼っていることが誰の目から見てもあきらか。

錠剤の服用

薬といえば錠剤!というようなイメージが強い方も多いかと思います。
様々な飲み薬がありますから、最もなじみ深いですよね。
男性ホルモンには残念ながら飲み薬はほとんど存在しませんが、ストレスや閉経等でのホルモンバランスが乱れているシス女性が行っているホルモン療法では、飲み薬が多く用いられています。
MtFのホルモン療法でも最もポピュラーな手段ですが、あまり推奨はされていません。

*わざわざ【錠剤の『服用』】としているのは、シス女性のホルモン療法では膣内に錠剤を入れる方法もあるので、それとは区別するためです。

利点
最もなじみ深い摂取方法。
・いつでもどこでも、水さえあれば簡単に使える。

欠点
腸から吸収されて肝臓を通ってから全身を巡るので、肝臓への負担が大きい。
・肝臓を通る際に成分の大部分が漉されてしまう。
血栓症のリスクが最も高い。
・量を増やしても効果よりもリスクが高くなることが多い。

まとめ

最も良いとされているのが、注射です。
一生涯続ける必要があるホルモン療法ですから、肝臓への負担や血栓のリスクは最も重要視するべきです。

錠剤は簡単に使える上に、個人的な入手も比較的容易です。でも、それらリスクが高いという重大な欠点があります。(後日、女性ホルモンの個人輸入についてもお話します。)
シス女性のホルモン療法は錠剤で行われることが多いのですが、MtFのように一生涯ではなくて短期間なのでリスクの差が全く違います。

だからといって、定期的にクリニックへ通って注射を受けるというのも大変です。人気がある病院であれば、待ち時間もそれなりかと思います。
天災などが発生した場合、クリニックが閉まってしまう可能性もあります。

注射、ジェル、パッチ、錠剤。
メインをどれにするのかを決めて、補助として別の方法も準備しておくのが良いでしょう。

何はともあれ、医師と相談の上で計画的に治療を進めていきましょう。

この記事を書くにあたって参考にしたサイト

大東製薬工業株式会社・ホルモン補充療法・塗り薬のメリット
あすか製薬株式会社・ホルモン補充療法(HRT)とは

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